●質問――どうしてメイフェアのお客さんは素敵なんですか?
「メイフェアのお客さんって、みなさん素敵ですよね」
「どうして素敵な人たちばかり集まるんですか」
メイフェアを訪れたり、ブログにコメントを書いたりした人が、こんな質問をくれることがある。
確かにそのとおりであると私も実感している。メイフェアをたびたび訪れるお客さんは、素敵な人ばかりだ。意識が高いというか、質の高いものに敏感といったらいいのか。
なぜなのかと問われて一言で端的に答えるのは、言語学者である私にも難しい。すべての人がまったく同じ目的でメイフェアを訪れるわけでもないだろう。しかし、メイフェアを好むお客さんに共通する特徴なら挙げられるかもしれない。
メイフェアを贔屓にするお客さんがなぜ素敵なのか、その理由を私も一緒に考えてみたい。
●美しいものに反応する人は素敵
お客さんとスタッフのやり取りを見ていると、おもしろい。スタッフが料理や飲み物の説明をすると、興味津々で聞いていたり、質問を返していたりする。ほかの店ではあまり見かけない光景だ。
現代の日本人はファーストフード慣れしてジャンクフードでも平気になっているから、「体に良いか悪いかなんて気にしない」「説明なんか要らないから早く食わせろ」「安くて早けりゃジャンクフードでもいい」というノリの人が増えている。
私はこの現象を「意識の退化」と呼んでいる。
また、現代人は概して鈍感でもある。ウェッジウッドのティーカップで紅茶を飲んでも、紙コップで飲んでも、「紅茶は紅茶、同じだろ」と感じてしまうくらい、感覚も審美眼も衰えている人が多い。
しかし、メイフェアのお客さんには、少なくともその繊細な違いを「わかろうとする姿勢」がある。しかも「そんな違いくらいわかる」とは主張しない。だから素敵なのではないか。
違いがわかるのは素敵。「わかろうとする姿勢」も素敵。しかし「わかった気」になるのは素敵ではない。何がどう違うのだろう。「前向きな謙虚さ」か。
きっとそうだ。メイフェアを愛する人には、「前向きな謙虚さ」があるからこそ、大人の女性として素敵だし、心の余裕も感じるし、だからますます違いがわかる。
心に余裕のある大人の女性は、紅茶の味わい方が根本的に違っていた。「この紅茶はおいしいかどうか」を判定しようとするのではなく、「どんなおいしさがあるのだろう」と美点を探そうとするような味わい方なのだ。
美しいものに反応する心を持つ大人ならではの、余裕のスタイルである。
●「値段は結局あまり変わらない」のだそうだ
メイフェアを愛する者の一人としては意地悪な質問を、逆にお客さんに投げかけてみたことがある。
「ランチに1500円は、新潟の相場としては安くないでしょう。なぜわざわざメイフェアに?」と。
すると、予想外の答えが返ってきた。
「今どき、ファミレスでもランチにドリンクを付けて、デザートでも追加注文したらもう1000円を超えてしまうんです。ほんの少し余計に出せばメイフェアのランチが食べられるんだったら、絶対にそのほうが豊かな時間になります」というのだ。
「メイフェアはデザートも飲み物も付いてくるし、値段は結局あまり変わらない」と。
なるほど、そう来たか。新潟の相場を知っている私としては、正直なところ「高いけれど、それだけの価値があるから」という答えを予想していた。
しかし、「値段は結局あまり変わらない」のだという。
「安いランチで済まそうとしても、どこか心が満たされないから、デザートを追加で頼んだりコンビニでお菓子を買ったりして、結局は安くならないし、太るし……。メイフェアのお菓子は太らないから好き」。
メイフェアのお菓子は太らない?! あぁ、あれか。白砂糖やグラニュー糖を使っていないからだな。
「安いわよメイフェアは」と即答したお客さんもいる。「あれだけ上質の接客をなさるでしょう? 社員教育には時間もお金もかかるの。その分は必ず商品に乗ってくるから上質のサービスを受けられる店は必ず高いものなのね。そこまで考えたら、メイフェアは安すぎるくらい」と。
この人、たぶん経営者だな。わかっていらっしゃる。
●メイフェアの「波長」と合うタイプ、合わないタイプ
私自身の意見としては、こうだ。メイフェアはさまざまなメッセージを発している。そのメッセージを受け取れる人だけが反応して、メイフェアを愛好するようになる。だから、素敵な人だけを選って集めたかのように、素敵なお客さんが通うようになるのではないか。
メイフェアの「波長」と合うタイプと合わないタイプがいるわけだ。
メイフェアが発しているメッセージには、たとえば音楽がある。クラシック音楽を気持ちいいと感じる感性の持ち主だけが、あの空間を好むわけだ。ロックのシャウトより演歌よりJ-POPより、漂うようなイタリアン・ベルカントのほうが、静かなピアノの調べのほうが、バロックの弦楽四重奏のほうが食事のBGMとして気持ちいいと感じる人が、メイフェアの空間に惹かれる。
「音楽? そんなものに興味はない」という人は、メイフェアに行かないタイプ。以前にコンビニのレジでタバコの銘柄を怒鳴りながら小銭を投げ出している人を見かけたが、ああいうタイプもメイフェアには行かないな。座るなり
「おうねえちゃん酒くれや」と叫ぶタイプもメイフェアの波長とは共鳴できない。
私? 合うタイプになりたいなぁ。「おうねえちゃん」では品がないしさ。
植物もそうだろう。花がいっぱいに咲いている場所と、そうでない場所とを比べたとき、違いを感じる人と感じない人がいる。花屋で花を買ったことのある人はたぶん前者だ。花が好きな人は、間違いなくメイフェアの波長と合う。
観葉植物も同じ。違いを感じる人と感じない人がいる。その違いはきわめて感覚的なもの。きもちいい、快適、心地よいといった言葉で表される、目には見えない感性。
ゆったりとリラックスしたいなら、体を温めてくれる紅茶がいいし、紅茶を飲むなら植物のある空間のほうがきもちいい――そう感じる人がメイフェアの波長と合う。
目に見えない感性といえば、音楽や声など、「目に見えない」ものを大切にする人は素敵だ。しゃべるときも、「意味が通じればいい」ではなくて「できるだけ良い声で話したい」と思っている人は、メイフェアの波長と合うタイプ。
心や気持ちも目に見えない。年齢を重ねるにつれて心を大切にするようになるのは、目に見えないものを意識できる大人の余裕なのだろう。
あなたはどっちのタイプかって? 間違いなく、メイフェアの波長と合うタイプ。なぜわかるか。合わないタイプだったら、とてもじゃないけれどこんな長ったらしい私の文章を最後まで読んでいないから。
間違いなく知的で、やわらかくて、余裕があって、「前向きな謙虚さ」もあって、上質なきもちよさを知っている人だな。そういう人が合うんだ、メイフェアには。
付き合ってくれて、どうもありがとう。
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