●アフタヌーンティーという習慣がなぜ生まれたか
19世紀後半にベッドフォード公爵夫人アンナが始めたとされる、アフタヌーンティーという習慣――この優雅な楽しみが定着したのには、実に英国的な理由があります。
アフタヌーンティーをとる理由は、早い昼食と遅い夕食の間の空腹を埋めるため。
なにしろ、夕食は夜10時頃になることもあったそう。
なぜか。
日本ではふつう夕食の時間帯とされる午後7〜9時あたりの時間帯は、観劇やオペラ鑑賞、夜の社交に当てられていたからです。
文化レベルの高さを思わせる習慣ですね。私が子どもの頃は、大人は仕事を終えて帰宅すると、ビールを飲みながらひっくり返ってナイター(野球のナイトゲーム)をテレビで観る、というのが定番の過ごし方でしたから。
アフタヌーンティーで軽く腹ごしらえをしてから、家族やお友達とオペラを観に行く――そんな文化的なライフスタイルを想像しながら、ぜひ召し上がってくださいね。
●優雅なアフタヌーンティースタンド
今でこそ2段ないし3段の銀製アフタヌーンティースタンドでサーブされる形式がおなじみですが、かつてはサーヴァント(給仕係)による手配りがふつうでした。
しかしそれでは、あまりに手間がかかるし、たとえばサンドイッチからスコーンに移っていいかどうかなど、出すタイミングを見計らうのも難しい。
そこで、スタンドにすべて載せて一度に出してしまう形が考案された、というわけです。言ってみれば、手間を省いて簡略化したわけです。
スタンドで出されると豪華な気分になりますが、実はサーヴァントが一つ一つ手配りで出してくれるほうがずっと丁寧なサービスなんですね。
さて、実際にアフタヌーンティーを召し上がるときの「食べる順番」ですが、そんなに堅く考えなくても大丈夫です。もともと作法のうるさい時代に家庭の中で広まったものではなく、ティールームで広まった習慣だからです。
しかし、そこは英国のこと、やはり基本は決まっているようで、「サンドイッチ→スコーン→ペストリー類(タルトなど)」の順に食べていくのが正式とされています。
いきなりスコーンに手を伸ばすと、「サンドイッチは要らないんだな」と判断する古い英国人もいるそうですから、おいしいサンドイッチを横取りされないように、食べる順番には気をつけましょうね。
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