英国紅茶サロン メイフェア
コラム
第17回…バナナケーキになぜそこまで夢中に……
●バナナは果物の王様
「バナナは果物の王様だ」
メイフェアオーナーの父親の口癖である。そういう時代に育った人なのだ。そのせいか、オーナーはバナナが大好物。アボカドと一緒に食べるのはもっと好き。
かつて、新潟駅前にあった「マザーグース」という喫茶店に通いつめ、1年に300食以上も「バナナブレッド」を食べていた時期もあるという徹底ぶり。手加減を知らないというか、リミッターが壊れているというか、そんなところが昔からある。
合気道で受け身の稽古に夢中になり、肩や腰が擦りむけて背中が血まみれになっても一向にやめようとしなかったというホラーのようなエピソードも、学生時代の勉強で「勤勉な学生」ではなく「言語オタク」と呼ばれてしまう過激さも、根っこは同じなのだろう。
で、バナナケーキ。なぜそこまでバナナケーキに夢中になるのか、理由ははっきりしない。
バナナにはカリウムが多く含まれていて、むくみに効くらしいが、別にむくんで困っているわけではない。食物繊維が豊富だから体の中からキレイにしてくれるらしいが、別に「体の中から美人に」なりたがっているわけでもない。
メイフェアに来ていろいろと勧められる中で、「バナナケーキ食べますか」と言われると、反応する声のトーンが高くなる。「このバナナケーキ、最高だ」と、目を閉じて味わっている。
「最高だ」
そんな、極上の恋人にしか囁かないような甘い台詞を口にしながら……。
このバナナケーキの、どこがそれほどまでに魅力的だというのか。ずっと作りたかったバナナケーキがやっと完成したという満足感のほかに、何がそこまでワクワクさせるのか。
●バナナたっぷりの安心バナナケーキ
まず、バナナがたっぷり入っている。
バナナがわずかしか使われず、香料でごまかしているようなバナナケーキでは、食指が動かない。お上品に膨らんだフカフカのケーキも、バナナケーキではない。大量のバナナのせいで、しっとり、もっちりしていなければ、合格は出せない。
そして、甘さはひかえめ。
ダイエットが気になるわけではないが、甘さはひかえめがいい。バナナ本来の甘さだけでもいいくらい。間違っても白砂糖やグラニュー糖などの精製糖で鋭い甘さを加えたりしないでほしい。
保存料や香料、着色料なんて一切お断りだから、よろしく。子どもでも安心して食べられるようなバナナケーキじゃなければならない。
最近、ファーストフード店のフライドポテトをすり潰して離乳食として赤ちゃんに与える母親がいると聞いたが、ダメだろそれは。
メイフェアで幼児にバナナケーキやスコーンを食べさせている光景があるが、それは安心だね。いい子に育つよ。
●手土産にも重宝、幻のバナナケーキ
実はこのバナナケーキ、期間限定で提供された特別商品だったのだが、メイフェアに電話して頼めば焼いてくれる。店内のメニューには載っていないのに、口コミで広がり、知っている人だけが買える“裏メニュー”となっている。
知らない人は存在すら知らないこのバナナケーキ、1本1000円という、パウンドケーキの3分の1の値段だから、数本まとめて注文して、手土産に重宝している常連客もいるらしい。
いわゆる受注生産というやつで、電話注文を受けてから作るから、常に焼きたて。そんなところも安心感につながるのかもしれない。
店内でも、通常メニューになくても頼んでみて、運よくあればケーキセットとして出してくれるから、よかったらどうぞ。
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